「収束」と「終息」の意味の違いと使い方
- 「新型コロナウイルスの感染が全国に広がる中、人々は早期終息への願いを込めて……」
- 「新型コロナウイルスによる危機が収束を迎え……」
上記のように、メディアでは「収束」と「終息」と二つの漢字が使われています。
こうした同音異字語を正しく使い分けるためには、それぞれの言葉の意味を知ることが大切かと思います。
目次
「収束」と「終息」の意味
デジタル大辞泉で調べてみると
「収束」とは
「収束」の「収(シュウ)」には「取りまとめる」「まとまる」という意味があり、「束(ソク)」には、「引き締めて一つにまとめる」という意味がありました。
そして、「収束」の解説には、
「収束」
分裂・混乱していたものが、まとまって収まりがつくこと。また、収まりをつけること。
とありました。
ここで言う「分裂」とは「一つのまとまりが、いくつかのものに分かれること」で、「混乱」とは「物事が入り乱れて秩序をなくすこと。いろいろなものが入りまじって、整理がつかなくなること」ですが、新型コロナウイルスによる今回の事態は「分裂」ではなく「混乱」にあたると思います。
また、「収める」には、「乱れているものを、落ち着いて穏やかな状態のする」という意味がありますから、
「収束」とは「混乱が落ち着くこと」
と言えます。
「終息」とは
「終息」の「終(シュウ)」には、「おわる」「おえる」「おわる」という意味があり、「息(ソク)」には、「やむ」「しずめる」という意味がありました。
そして、「終息」の解説には、
「終息」
物事が終わって、やむこと。
とありました。
「物事が終わって、やむこと」の「物事」とは新型コロナウイルスによる「混乱」ですから、
「終息」とは「混乱が終わったこと」
と言えます。
ここまでをまとめます。
- 「収束」とは「混乱が落ち着くこと」
- 「終息」とは「混乱が終わったこと」
さらに、「収束」と「終息」について、道浦俊彦タイムに次の記事がありましたので引用させていただきます。
……。つまりピークを越えて、その『流行のベクトルがマイナス』に向かい始めたら『収束』。『流行の停止』が『終息』だと思います。」
また、NHK文研の「最近気になる放送用語」には、次のようにありました。
「終息」は「完全制圧」であるのに対して、「収束」の場合には、ほぼ事態が収まっていることを意味します。
ピークが過ぎて流行が下火になった状態が「収束」で、完全に制圧された状態が「終息」なんですね。
「混乱が落ち着くと(収束)、その先に混乱の終わり(終息)が見えてくる」といった見通しを持ちたいものです。
「収束」と「終息」の使い方
それでは、「収束」と「終息」の使い方について考えてみたいと思います。
「収束」の使い方
「収束」には「収束する」「収束を図る」「収束に向かう」などの言い回しがあります。
例文
- 「争議が収束する」
- 「争いが収束する」
- 「事態の収束を図る」
- 「事態は収束に向かった」
- 「事故による混乱は収束した」
「終息」の使い方
「終息」には「終息する」「終息を迎える」「終息に向かう」などの言い回しがあります。
例文
- 「蔓延(まんえん)していた悪疫が終息する」
- 「インフレが終息する」
- 「戦争が終息を迎える」
- 「事件は終息に向かっている」
「収束」と「終息」を使ったミニコラム
最後に、「収束」と「終息」を使ったミニコラムを書いてみました。
新型コロナウイルス流行のさなか、9回目の3.11を迎えました。
東日本大震災による混乱は一見落ち着いたように見えますが、行方不明者の捜索は今も続けられています。かさ上げ工事、防潮堤の建設などが進んでいますが、被災者の生活再建はいまだ道半ばです。また、福島第一原発事故の被災地の再生は先が見えない状態にあります。
このように、震災直後の大混乱は収束したと言えるのかもしれませんが、震災に関連する諸問題は決して終息してはいないのです。
震災に関して言えば、何をもって「収束」と言ってよいのか分かりません。ましてや「終息」などという言葉を使えるときはくるのでしょうか。
まとめ
今回のポイントをまとめます。
「収束」とは「混乱が落ち着くこと」
- ほぼ事態が収まっていることを意味する。
「終息」とは「混乱が終わったこと」
- 完全に制圧されていることを意味する。
新型コロナウイルス流行の一日も早い収束を祈ります。そして、新型コロナウイルスが完全制圧され、終息し、安心して暮らせる日が来ることを待ち望みます。