「通り」と「とおり」の使い分け 「次の通り」と「次のとおり」 公用文では
「アンケートの結果は次のとおりでした」と書くとき、「次の通り」なのか「次のとおり」なのか迷うことがあります。
ほかにも、「実践を通して学ぶ」「予想どおり」など、「通」という漢字の使い方はいろいろあります。
そこで、今回は「次の通り」なのか「次のとおり」なのかをテーマに書いてみたいと思います。
目次
「通す」と「通り(とおり)」と「通り(どおり)」の意味
はじめに、「通す」「通り(とおり)」「通り(どおり)」について「日本語大辞典(講談社)」を引いてみました。
「通す」
①㋐通るようにさせる。通過させる。「光を通す」
㋑貫く。いろいろな条件をのりこえる。「岩を通す」「意地を通す」
②やめずに続ける。「三年間無欠席で通す」
③あいだに立って伝達する。「注文を通す」
④経由する。「人を通して話す」
⑤合格であると認める。「法案を通す」
⑥人を部屋に案内する。「奥へ通す」
⑦はじめから終わりまで見る。「文書に目を通す」
⑧狭い所を抜けて向こう側に出す。「針に糸を通す」
(出典元:「日本語大辞典」講談社)
冒頭の用例「実践を通して学ぶ」の「通して」の意味は「④経由する」に当たります。
「通り(とおり)」
⑴①通ること。通じること。「下水の通りが悪い」
②道。往来。「通りに面して店が並ぶ」
③声・音が伝わること。伝わり方。「声の通りがいい」「通りのよい名前」
④聞こえ・評判。「世間の通りがよくない」
⑤わかりやすいこと。「通りのよい文章」
⑥上にくる語に同じ状態であること。「考えたとおりになる」「そのとおりです」
⑵組・種類・回数などの、やり方や様式を表す。「四通りの組み合わせ」
(出典元:「日本語大辞典」講談社)
冒頭の用例「次のとおり」の「とおり」は、「⑥上にくる語に同じ状態であること」に当たります。
「通り(どおり)」
①道筋の名につける語。「銀座通り」
②おおよその分量を表す。くらい。程度。「九分通り」
③同じようす。状態。「従来どおり」「予想どおり」
(出典元:「日本語大辞典」講談社)
冒頭の用例「予想どおり」の「どおり」は、「③同じようす・状態」に当たります。
さて、「次のとおり」と「次の通り」についてですが、「常用漢字表」には、
本表
漢字 | 音 訓 | 例 | 備考 |
通 | ツウ ツ とおる とおす かよう | 通行、通読、普通 通夜 通る、通り 通す、通し 通う、通い |
(出典元:新訂公用文の書き表し方の基準(資料集)文化庁)
※黄色マーカーは筆者
と、「通」に「とおる」の訓が掲げられているので、「次の通り」と書くことはできます。
しかし、「公用文における漢字使用等について」には、
1 漢字使用について
(2)「常用漢字表」の本表に掲げる音訓によって語を書き表すに当たっては、次の事項に留意する。
キ 次のような語句を、( )の中に示した例のように用いるときは、原則として、仮名で書く。
例 とおり(次のとおりである。)
(出典元:新訂公用文の書き表し方の基準(資料集)文化庁)
※黄色マーカーは筆者
と掲げられています。
したがって、公用文では「次のとおり」と書く、ということになります。
「通す」「通り」「…とおり」の使い分け
「文部科学省用字用語例」に「とおす」と「とおり」の書き表し方が示されています。
見出し | 表外漢字・表外音訓表 | 書き表し方 | 備考 |
とおす | 通す | …を通して | |
とおり | 通り …とおり | 銀座通り、一通り 次のとおりである、従来どおり、 通知どおり実施した |
(出典元:新訂公用文の書き表し方の基準(資料集)文化庁)
「通す」「通り」「…とおり」の使い分けの用例を集めてみました。
「通す」
- 実践を通して学ぶ。
- 人を通して話す。
- 知人を通して申し込む。
- 面接を通して人柄を見る。
- 彼を通して交渉する。
「通り」
- 銀座通り。
- 目抜き通り。
- 並木通り。
- 一通り。
- 九分通り。
「…とおり」
- 次のとおりである。
- 従来どおり。
- 通知どおり実施した。
- 予想どおり。
- 教えられたとおり。
- 考えたとおり。
- そのとおり。
まとめ
今回のポイントはひとつです。
「次の通り」なのか「次のとおり」なのか。
- 「次の通り」と書くことはできるが、公用文では原則として「次のとおり」と仮名で書く。
「上にくる語に同じ状態であること」「同じようす、状態」を言う場合は「…とおり」を使い、それ以外は「通り」と覚えておけばよいと思います。