「固執」は「こしつ」か「こしゅう」か

以前「固執」を「こしゅう」と読むのはお年寄りの読み方だと聞いたことがあります。それ以来私は「こしつ」と読んでいますが、本当はどう読んだらいいのでしょう。

そこで今回は、

「固執」は「こしつ」か「こしゅう」か

についてを調べてみることにしました。

「こしつ」と「こしゅう」を辞書で引く

まず始めに手持ちの辞書をいくつか引いてみました。

明鏡国語辞典第二版(大修館書店)

こしつ【固執】

自分の考えや意見をかたくなに守って譲らないこと。

「自分の意見に固執する」

▽「固執(こしゅう)」の慣用読みだが、今日では「こしつ」が一般的。

 

こしゅう【固執】

⇨こしつ(固執)

出典元:「明鏡国語辞典第二版(大修館書店)」

旺文社国語辞典第九版(旺文社)

こしつ【固執】

かたく自説を主張して曲げないこと。固持。

「自分の立場に固執する」

 

こしゅう【固執】

→こしつ(固執)

出典元:「旺文社国語辞典第九版(旺文社)」

日本語大辞典(講談社)

こしつ【固執】

かたく自説を主張して譲らないこと。固持。こしゅう。

 

こしゅう【固執】

→こしつ(固執)

出典元:「日本語大辞典(講談社)」

岩波国語辞典第五版(岩波書店)

こしつ【固執】

→こしゅう(固執)

 

こしゅう【固執】

自分の意見などを、あくまでも主張しつづけること。こしつ。

出典元:「岩波国語辞典第五版(岩波書店)」

広辞苑第五版(岩波書店)

こしゅう【固執】

(コシツとも)

①自分の意見などをかたく主張して枉(ま)げないこと。

「自説に固執する」

②(心)過去の印象や特定の行動などが心の中に残っていてそれが反復出現すること。

 

こしつ【固執】

⇨こしゅう

出典元:「広辞苑第五版(岩波書店)」

「こしゅう」は空見出し

前述の国語辞典では、「こしゅう」を空見出しにしているものが多いようです。

「空見出し」とは、見出し語として掲載されているけれども、詳しい解説がなくて、他の項目を参照している見出しのことをいいます。

つまり、「こしゅう」が空見出しであることは、「こしつ」の方が一般的であることを表しているといえます。

「こしつ」は「こしゅう」の慣用読み

「こしつ」が一般的であることを明鏡国語辞典が、

▽「固執(こしゅう)」の慣用読みだが、今日では「こしつ」が一般的。

と解説しています。

かんようよみ【慣用読み】

本来は正しい読み方ではないが、広く一般でもちいられるようになったため、完全な誤りとはいえなくなっている読み方。「借問(しゃもん)」を「しゃくもん」と読む類。

出典元:「日本語大辞典(講談社)」

つまり、「固執」は、本来は「こしゅう」と読むけれども「こしつ」と読んでも間違いとはいえなくなっている。そして、今日では「こしつ」と読むのが一般的になっている。ということを述べているのです。

「執」の読み

「執」には、漢音としての「シュウ」と慣用音としての「シツ」があります。

「漢音」とは日本の漢字音の一つで、「慣用音」は本来の字音ではないけれども日本で一般に通用している漢字音のことです。

「手にとる」「とり行う」「扱う」などの意味を含む熟語の場合は、「シツ」と読むのが普通です。

「しつこく取りつく」「とらわれる」などの意味を含む場合は、「シツ」とも「シュウ」とも読むことがあります。

「固執」もその一つで「コシツ」と「コシュウ」の両方の読みが行われています。

常用漢字表の本表には、

漢字 音訓 備考
シツ

シュウ

とる

執務、執筆、確執

執念、執心、我執

執る

 

 

⇔取る、採る

出典元:「文化庁新訂公用文の書き表し方の基準(資料集)」

とあります。

常用漢字表は、字音が複数ある場合は代表する字音で配列されています。

「執」の場合は慣用音の「シツ」が代表音になっていて、一番はじめに挙げられています。

「シツ」の語例は「執務、執筆、確執」、「シュウ」の語例は「執念、執心、我執」となっています。

この中で、「確執」は古くは「カクシュウ」と読まれていて、表にはありませんが「固執」も古くは「コシュウ」と読まれていました。

常用漢字表で「確執」を「カクシツ」と読んでいることから、「固執」も「コシツ」と読むのが順当であると考えられます。

参考:「日本語に強くなる本(省光社)」「日本語、どうでしょう? ~知れば楽しくなることばのお話~」

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「こしゅう」は老人語?

新明解国語辞典第五版には、

こしゅう【固執】

「こしつ」の老人語

出典元:「新明解国語辞典第五版(三省堂)」

とあります。

冒頭で述べた『「こしゅう」はお年寄りの読み方と聞いた』はこのことだったのです。

「新明解国語辞典」について『ウィキペディア(Wikipedia)』には、

1972年刊行の「新明解国語辞典」は「ことばの使用相のレッテル」の一つとして老人語を設定した。しかし、『新明解国語辞典』第4版(1989年)以降、版を改めるごとに、一部の語彙において「老人語」という説明を「古風な表現」「やや改まった表現」などに改めたり、「老人語」の説明を削除したりし、第7版(2012年)で「老人語」という説明は完全になくなった。

出典元:「フリー百科事典ウィキペディア(Wikipedia)」

といった主旨の解説が記されています。

そこで、新明解国語辞典第七版を確認してみると、

こしゅう【固執】

「こしつ」の古風な表現。

出典元:「新明解国語辞典第七版(三省堂)」

と、確かに「老人語」が「古風な表現」に変わっていました。

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まとめ

  • 「固執(こしつ)」は「固執(こしゅう)」の慣用読みだが、今日では「こしつ」が一般的になっている。
  • 国語辞典の多くが「こしゅう」を空見出しにしていることからも、「こしつ」が一般的といえる。

 

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