百年文庫27「店」石坂洋次郎、椎名麟三、和田芳恵
「婦人靴」石坂洋次郎
柴谷又吉は住み込みで働く靴職人。早川美代子は織物工場の女工。二人はペンフレンドを求めて投稿欄で知り合いました。二人は本当の自分を隠したまま交際を続けていましたが、あるとき又吉がプレゼントした赤いハイヒールをきっかけに美代子の音信が途絶えてしまいます。美代子には訳があったのです。美代子はそれを手紙で又吉に打ち明けました。
貧しくても希望を持って進もうとする昭和30年頃の若者の姿が甦ってくるようです。
「黄昏の回想」椎名麟三
若林は経済的にも仕事上でも、もう一手で詰む将棋の王のような状態にあります。
彼は今で言うDVの父親と、それを支えるために妓楼の下働きをする母親の下で育ちました。学校でいじめられ、レストランのコック見習いを経てカフェーで働くようになりましたが、彼はそこでもいじられキャラでした。そのカフェーのマスターを若林がデパートの休憩場で偶然見かけたとろから物語の回想が始まります。
虚しさ、切なさの残る物語でした。
「雪女」和田芳惠
題名を見ると「これは怖い話かな」と思ってしまいますが、まったく違って、ほのぼのと温かい物語なのです。
脚気で足が不自由になった仙一は、印章店に住み込み仕事を覚えました。やがて仙一は家業の荒物屋を弟に譲り、自分は印章店の跡取りになりました。仙一には出生の秘密もありましたが、周りの人々が温かく見守ってくれました。晴れ上がった雪景色の中、幼馴染のさん子と結婚の約束をする場面が何ともいいのです。
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