「受け付け」「受付け」「受付」の違いと使い分け

案内状に

受付 13:30~」

「会員以外の皆様の御参加も受け付けております」

と書いたり、

研修会場の入り口に

受付」の表示

を貼ったりするときに、

「受け付け」「受付け」「受付」の違いと使い分けに迷うことはありませんか?

今回は、

「受け付け」と「受付け」と「受付」の違いと使い分け

についてお伝えいたします。

はじめに「日本語大辞典(講談社)」で「うけつけ」「うけつける」を引いてみました。

「うけつけ」「うけつける」とは

うけ-つけ【受(け)付け・受付】

①受け付けること。②受け付けたり、取り次いだりする所・人。-にすわる。

うけ-つける【受(け)付ける】

①申し込みを受ける。②受け入れる。③会社などで、来客の用件を取り次ぐ。

(出典元:「日本語大辞典」講談社)

「受(け)付け」「受(け)付ける」の「け」に( )が付いています。

この( )の意味が巻頭「この辞典の使い方」に記載されています。

五 送り仮名

1 送り仮名は、昭和48年内閣告示『送り仮名の付け方』の通則に基づき、表示しました。送り仮名を省くことのできる語は、( )の中に、小さく示しました。

(出典元:「日本語大辞典」講談社)

つまり、「受(け)付け」「受(け)付ける」の (け)は省いてもよいということなのです。

だから、「うけつけ」には「受け付け」「受付け」「受付」の三つの表記があるということなんですね。

補足

昭和48年内閣告示『送り仮名の付け方』は、昭和五六年一〇月一日内閣告示第三号 改正されている。

 

それでは、この『送り仮名の付け方』を見てみましょう。

送り仮名の付け方

送り仮名の付け方

前書き

一 この「送り仮名の付け方」は、法令・公用文書・新聞・雑誌・放送など、一般の社会生活において、「常用漢字表」の音訓によつて現代の国語を書き表す場合の送り仮名の付け方のよりどころを示すものである。

二 この「送り仮名の付け方」は、科学・技術・芸術その他の各種専門分野や個々人の表記にまで及ぼそうとするものではない。

三 この「送り仮名の付け方」は、漢字を記号的に用いたり、表に記入したりする場合や、固有名詞を書き表す場合を対象と していない。

(出典元:昭和48年内閣告示『送り仮名の付け方』)

(※黄色マーカーは筆者による)

「よりどころ」とは、「根拠となる事柄」ですから、この「送り仮名の付け方」に公用文書などで送り仮名を付けるときの「根拠」が示されているということです。

次に、「受け付け」などの複合語の送り仮名について「通則6」「通則7」を見てみましょう。

「受け付ける」と「受け付け」

通則6

本則 複合の語(通則7を適用する語を除く。)の送り仮名は、その複合の語を書き表す漢字の、それぞれの音訓を用いた単独の語の送り仮名の付け方による

〔例〕

(1) 活用のある語

書き抜く 流れ込む 申し込む 打ち合わせる 向かい合わせる 長引く 若返る 裏切る 旅立つ

(後略)

(2) 活用のない語

(前略)

行き帰り 伸び縮み 乗り降り 抜け駆け 作り笑い 暮らし向き 売り上げ 取り扱い 乗り換え 引き換え 歩み寄り 申し込み 移り変わり

(後略)

(出典元:昭和48年内閣告示『送り仮名の付け方』)

(※黄色マーカーは筆者による)

上記によると、複合語である「うけつける」の送り仮名は、

「受け」+「付ける」=「受け付ける」

となり、

「申し」+「込む」=「申し込む」

と同じです。

また、複合語である「うけつけ」の送り仮名は、

「受け」+「付け」=「受け付け」

となり、

「申し」+「込み」=「申し込み」

と同じです。

「受付ける」と「受付け」「受付」

許容 読み間違えるおそれのない場合は、次の( )の中に示すように、送り仮名を省くことができる。

〔例〕 書き抜く(書抜く) 申し込む(申込む) 打ち合わせる(打ち合せる・打合せる) 向かい合わせる(向い合せる) 聞き苦しい(聞苦しい) 待ち遠しい(待遠しい)

(中略)

抜け駆け(抜駆け) 暮らし向き(暮し向き) 売り上げ(売上げ・売上) 取り扱い(取扱い・取扱) 乗り換え(乗換え・乗換) 引き換え(引換え・引換) 申し込み(申込み・申込) 移り変わり(移り変り)

(後略)

(出典元:昭和48年内閣告示『送り仮名の付け方』)

(※黄色マーカーは筆者による)

この「許容」により、

「受け付ける」は「受付ける」でもよい。

「受け付け」は「受付け」「受付」でもよい。

ということになります。

通則7

複合の語のうち、次のような名詞は、慣用に従って、送り仮名を付けない。

〔例〕

(1) 特定の領域の語で、慣用が固定していると認められるもの。

ア 地位・身分・役職等の名。(省略)

イ 工芸品の名に用いられた「織」、「染」、「塗」等。(省略)

ウ その他。

(前略)

引換⦅券⦆ ⦅代金⦆引換 振出⦅人⦆ 待合⦅室⦆ 見積⦅書⦆ 申込⦅書⦆

(2) 一般に、慣用が固定していると認められるもの。

(前略)

 置物 織物 貸家 敷石 敷地 敷物 立場 建物 並木 巻紙 受付 受取

(後略)

(出典元:昭和48年内閣告示『送り仮名の付け方』)

(※黄色マーカーは筆者による)

このように名詞である「受け付け」は、慣用に従って、送り仮名を付けないで「受付」と書くことができるのです。

なお、このことについては、平成22年11月30日付けの「法令における漢字使用等について」にも記載があります。

このようにして見ると、

「受付け」は「受け付け」の省略で、「受付」名詞としての「受け付け」が慣用化された、と理解できます。

だから、

案内状の「受付 13:30~」も研修会場入り口の「受付」の表示も、問題ありません。

また案内状の「会員以外の皆様の御参加も受け付けております」は「受付けております」でも構わないことになります。

「受け付け」と「受付」の違いと使い分け

ところで、慣用に従って送り仮名を付けない「受付」について、「日本語に強くなる本(省光社)」に解説があったので紹介させていただきます。

内閣告示「送り仮名の付け方」の通則7の例示の中に「受付」の形が掲げられている。それは「一般に慣用が認められるもの」の一つとして「合図・貸家・巻紙」などと同様に扱われているのである。

しかし、これについては「受け付ける」という動詞の意味が転じ、名詞としてのみ用いられる「うけつけ」と考えられるべきだろう。たとえば、次のような例である。

「請願書は玄関で受け付けない。」

また、「うけつけ」については、「願書の受け付けは、午前九時から行う」のように動詞の意味の意識が残っている場合も「受け付け」となる。

(出典元:「日本語に強くなる本」省光社)

(※黄色マーカーは筆者による)

「受け付け」には動詞の意味が残っている。

なるほど。

「日本語大辞典(講談社)」で引いた【受(け)付け・受付】の「①受け付けること。」には動詞の意味があります。

とすると、「②受け付けたり、取り次いだりする所・人。」は「受付」を示すことになります。

つまり、

【受け付け】は「①受け付けること。」

【受付】は「②受け付けたり、取り次いだりする所・人。」

です。

まとめ

「受け付け」と「受付け」と「受付」の違いと使い分けについてお伝えしてきましたが、いかがでしたか?

今回のポイントをまとめます。

  • 「受け付け」には動詞の意味が残っている。
  • 「受付け」は「受け付け」の省略。
  • 「受付」は、名詞としての「受け付け」が慣用化したもの。

今はっきりと言えることは、「受け付け」と「受付」の使い分けができれば間違いないということです。

筆者自身、「受け付け」と「受付」の違いが分かってスッキリしました。

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